ディテールプラン2
壁の計画は工場を新設する際には現場から「今までカビがついても、汚れた表面が拭くことも出来ないコンクリート壁であったから次は掃除がしやすい壁にしてほしい」、「少し当たっても直ぐに壊れてしまうようなものじゃなくて、もっと丈夫なものにしてほしい」という要望が多く、これらの声に応えるためにも壁のデザインプランを行う際は強度があり、カビの発生を抑え、掃除のしやすい材質を選択したい。
Codexにも、掃除がしやすく、異物が付着しにくく、埃などが堆積しにくい材質を選択すべきだと記されています。
まず壁を計画する際の構造要件をご紹介すると、
@内壁は明るい色で隙間がなく、平滑で清掃が容易に行える構造であること。
A内壁は突出する柱、配管、配線などが見られない構造であることが望ましい。
B内壁と床面の境界は、半径5cm以上のアールを設け、清掃が容易に行える 構造であること。
C水や湯を使用する部分にあっては、少なくとも床面から1m以上の高さまで 不浸透性・耐酸性・耐熱性の材料が使用されていることが望ましい。
D配線や配管の貫通がある場合は、さく穴との隙間を完全に封鎖し、ねずみ、昆虫などの侵入を防止すること。
@でいう明るい色とは勿論赤や黄色などを使おうということではなく、作業に効果的な照度を確保できる反射率を有する白やアイボリーの色選がスタンダードとなります。働く人にとって心理的な作用を考えた選択を検討する事もお薦めとなります。
【色と感情】
白: 神聖、潔白、純真、快活
黒: 悲哀、沈黙、静寂
赤: 熱情、愛情、活動、勇気
黄: 希望、光明、向上、愉快
緑: 安息、平静、健全、着実
青: 沈静、深遠、冷静、冷淡
【配管識別標準】
水 青(2.5PB5.5/6)
空気 暗い赤(7.5R 3/6)
空気 白(N -9.5 )
ガス 黄 (2.5Y-8/13 )
電気 淡黄赤(2.5YR 7/6)
Aに述べた配管、配線の壁内への隠蔽はボード仕上げの構造(下地:軽量鉄骨 仕上げ:ケイ酸カルシウム板、石膏ボード)とする場合は作業しやすのですが、断熱パネルなどは製品発注時に依頼しておかないと内部にウレタンが注入されているため仕込むことは困難となります。断熱パネルを使った壁を計画する際は配管が横引きとなることを極力短縮し縦配管を基本としカバーしましょう。
Bに述べるRはもうお馴染みの構造要件である。5pと紹介しているがスケールで測ってまでも精度を追求するものではなく目安です。実際にあまり小さなRは却って清掃がしにくく、樹脂材を使った床のRは形成しやすいが壁との取り合いはいささか困難で連続性のある仕上がりにするにはボード壁では下端にフラットな材料を仕込み樹脂を塗り上げ易くしておき連続性をもたせられる工夫などを考える必要があるとともに、異質の材料の接続となるためジョイント部分にはクラック対策を要します。
Cに紹介している、不浸透性という壁への要望は先ほどの「今までカビがついても、汚れた表面が拭くことも出来ないコンクリート壁であったから次は掃除がしやすい壁にしてほしい」という要望も併せて考慮する必要があります。以前はよく見られた壁の構造で、腰までブロックを積み、その上部はボードにて仕上げは、水の使用が頻繁な作業に対しては耐水効果があり、しかも安価な構造でしたが、汚れが付きやすく除去しにくいという弱点があります。そのため汚れを除去しやすい構造ということでタイルでの仕上げが登場し、今もタイル仕上げという構造は飲食店の厨房等では多く見受けられますが、タイル間の目地の汚れへの対応には閉口します。目地に注入されているのはセメントであるため清掃しても次第にその汚れは蓄積されていく。結局日頃より清掃に十分配慮し清潔な状態を保つという手間が必要となります。
コンビニのトイレなどで採用されている汚れも付きにくく清掃がし易い化粧ボードは材料としては非常に注目に値するものですが、イニシャルコストが高くつくという弱点はあります。同様に高価となりますが、強度・カビ・清掃の3つの要素に対して有効な材質としてステンレス材があります。
また時間的な制約や異物混入などのリスクを回避しながらの工事を計画する必要がある既存工場のリニューアルの際などには断熱パネルの採用も一考である。表面仕上げも汚れが付きにくく、施工時間も非常に短時間で計画することが出来ます。
Dは新設の工場の場合は壁が設置された後に配管を貫通させる事が多いため比較的に処理は施し易いが、既に配管がされている既存工場に壁を新設する場合は配管周囲の処理は厄介となる。出来るならば壁を設置する際に一旦配管を撤去し壁設置後に再度配管を行う手順が望まれるが、決して供給を止める事が出来ない給水管であるならば根気ある職人技にて対応してもらう必要があります。