ディテールプラン3
建物の多くが「つり天井」といわれる構造です。
天井裏には空調・照明・換気などの設備、断熱・遮音・吸音材などが設置されています。これらを収容し、その性能を維持・保持するために「つり天井」構造が採用されています。「つり天井」は、天井裏のコンクリート部や鉄骨に金属製のボルトを装着し、ハンガー・野縁受け・クリップ・野縁などを組み合わせて格子状の骨組みを作り、表面を石膏ボードなどで仕上げた構造となっています。断熱パネルの天井も同様につり天井となっています。天井の重さは一般的に1平方メートルあたり7〜60kgほどで、地震時にはそれがブランコのように揺れ動きます。各部材に不規則な力がかかって変形したり、端部が建物本体や壁などに衝突し、大きな地震では落下となり危害となったこともあります。食品工場の天井の要件は前述の強度にたいする対策を基本とし、部屋内面に関して述べられています。
天井に求められる構造要件
@天井は明るい色で隙間がなく、平滑で清掃が容易に行える構造であること。
A天井は梁、配管、ダクト、照明設備などが露出していない構造であることが望ましいが、やむを得ず露出している場合に在っては、清掃が容易に行える構造であること。
B天井は床面から2.4m以上の高さが望ましい。
C水蒸気が発生する場所では、必要に応じてその表面に耐湿性及び耐熱性の材料を用いるとともに、断熱材を併用するなど、結露、かびの発生などを防止できる構造であること。
D汚れが付着しにくい材料で仕上げてあること。
@天井は明るい色で隙間がなく、平滑で清掃が容易に行える構造であること。
この項目が要件として求めているのは、3つとなります。色・構造・表面形状です。
色は壁同様、作業者に対しての精神効果や照明の反射率を考慮し異物混入の発見に寄与できるものを選択することとなります。床・壁・天井ともに色の選択は、その色が衛生面でハード的に貢献出来るという考え方を基本に行うべきでしょう。
構造としては隙間が無いことが求められているため、天井をボード類で仕上げる場合は、張り合わせるボードとボードに間を開けた透かし張りは避けるべきです。もし既存工場の天井がこの工法にて設置されているなら、衛生改善のためには新規にボードを重ね張りして隙間を無くすか、隙間にコーキング材などを充填し埃溜まりとならないように改善すると改善にはなります。表面形状は清掃が容易に行える程度に凹凸が無い平滑なものが推奨されます。天井材といえば事務所等で用いられている事が多い石膏ボード(虫食い)があります。安価で施工性もよく不燃材もあるため重宝ではありますが、表面に微妙な凹凸があるため製造エリアでは控える方がよいです。他にも珪酸カルシウム板等、安価、不燃かつ平滑な材料がありますが、部屋の使用環境によりその選択には検討を要します。理由としては、ボード仕上げが塗装となるケースでは熱により塗装材が剥離し、異物混入危害が生じることも考えられるからです。選択した材によりハードに起因する危害が発生することが無いように選択することが衛生的な工場を計画する上では大切となります。
B天井の望ましい高さとは。
建築基準法施行令においては、「居室の天井の高さは、2.1メートル以上でなければならない」とされており、最低限の高さは2.1メートルである。実際に新規工場を設計する場合は設備との関係により3m程度の高さが確保されている例が多いようです。高さについてはベストという数字は特に無いと考えていますが、水を使う室内環境であれば、しぶきが天井に付かない程度の高さを設定すると良いし、空調コストを考えるならばあまり高く設定しない方が有効となります。また室内の使用環境を考慮すると共に天井と屋根(あるいは2階スラブ)とのスペースを考慮する必要があります。特に屋根と天井のスペースは結露やメンテナンス作業と密接な関係が出てきます。屋根と天井のスペースが狭ければ夏は室内温度が高くなりやすく室温調整が難しくなります。冬場には外部の冷え込みに影響され天井表面温度がさがり結露が生じやすくなります。逆にふところのスペースを大きくとり過ぎると、感知器の設置(50センチ以上)が必要にもなりますし、建設コストも不経済となります。計画する際は最低限確保したい天井高を前述した検討内容を踏まえ決定し、屋根の高さは建築専門家に任せる方が早くて確かといえる。
C水蒸気が発生する場所では、必要に応じてその表面に耐湿性及び耐熱性の材料を用いるとともに、断熱材を併用するなど、結露、かびの発生などを防止できる構造であること。
ボイル工程をもつ製造施設において計画で難しいのは蒸気でとなります。換気回数を多く設定しても一時に発生する蒸気を瞬時に取り除くことは至難の業です。天井には耐湿性、耐熱性の材料が要求されています。フードを設置しても100%瞬時に蒸気を取り除けなければ室内に蒸気は拡散し天井への結露を発生させ、吸湿性があるボードならば含んだ湿気がカビの発生要因を促し、ライフサイクルよりも短期にて朽ちる事にもなる。それゆえ耐湿性能を持ったものを選択することがベターということです。
蒸気が発生する天井にふれているので天井そのものの形状について少し解説を加えておくと、ボイル室などでは水平でなく天井に傾斜をもたせて蒸気や熱気を誘導する形状が考えられます。フードでの局所排気ではなく部屋全体にフード的な効果を持たせる考えです。蒸気や熱気の誘導効果は水平よりも確かに良くなると考えますが、決して天井表面に結露が発生しなくなるのでは無いということを忘れてはなりません。空気の流れをしっかりと計画し、通常の天井と同様に断熱性や耐湿性を備えた材質を選択しなければならないことにはかわりありません。
天井に設置される照明に関する要件
T・製造場には、モニタリング、検査などを行う場所にあっては300ルクス以上、一般の場所にあっては150ルクス以上の照度が得られるものを設置する。
U・照明は、商品の色調が変わらないようなものであること。
V・照明装置には、電球等の破損による破片の飛散を防止する保護装置が設けられていること。
照度に関しては前述の数字は最低限の目安と考える。出来れば清潔区では700〜1,000ルクス、準清潔区では500ルクスの照度を確保する方が良いでしょう。異物の混入あるいは混入する恐れのある塵埃などが発見しやすい照度を確保するという考え方です。
この要件には多くの製造施設が対応されています。電球が飛散防止タイプであればそれで良しというものではなく、破損しても製造物に極力破損したガラスが混入しないように設置位置を考えるべきです。破損した真下に充填機があっては即生産を停止しなければならなくなります。照明の設置位置は機械ラインの真上には計画しないようにするようにすることが大切です。また埋め込み式の照明器とすると更に混入の危害発生率は少なくなるが、照度を確保するために露出よりも器具が多くなるというコスト面での負担は多くなります。最近は、カバー付きのLED照明器具の普及は、防虫や破損、コスト面でも食品工場を計画する立場のものにはありがたいです。