バリア施設の計画法1

バリア施設の計画法1

食品工場完成室4

人の入退室・物の搬出入の出入口となる扉等の外部よりの出入り口を代表とするバリア施設についての計画法や、床・溝など5Sとも関係が深い施設内部の構造詳細の計画について。ゾーニングや動線の計画をトータルプラン(総合計画)とするとこれらの計画はディテールプラン(詳細計画)となる。さらに、出入り口の計画などはバリア施設、床や溝の構造計画はデザインプランと称してご紹介します。

 

バリア施設の基本

バリア施設として取り上げるものは、扉・シャッター・窓を代表とする建築的な開口部。排水口・換気口・配管貫通部といった設備開口。手洗いなどを行うサニタリー施設などの外部よりの出入りが考えられる箇所の計画である。招かざる客から衛生的な施設環境を守るということからバリア(barrier : 障壁。防壁。)という言葉を使用しています。

 

バリア施設を計画する際の基本は、交差汚染のない施設内ゾーニングや動線が整備されて衛生的となっている室内空間に対して外部からその環境を阻害・侵害すると考えられる虫・そ族をいかにくい止めるかになります。

 

作業者に対してはいかに衛生的(異物や菌を持ち込まない)な状態で進入させるかということになります。江戸時代のごとく許された者だけは通行させるという関所を製造施設の手前に設け、鎖国的な対応にて対処するることとなります。

 

 

「しんにゅう」という漢字変換をすると進入・侵入・浸入などが候補として出てきます。「進入」とは人や乗り物などがその場所へ進み入ること。「侵入」とは他の領分を侵して強引に入り込むこと。「浸入」とは水などが入り込むこととなっています。作業者が製造エリアに入ってくるのは進入であり、虫が製造エリアに入ってくるのは侵入である。進入は害ではなく受け入れても差し支えないものですが、侵入は泥棒が家に押し入るかのごとく、決して入れてはならないものとなります。食品製造施設においても進入する者・物は入ってくる行為そのものを拒むのではなく一定の手続きを踏ませて入退場させる関所が必要であり、侵入する者・物に対しては決して入れることのないガードが要求されます。バリア施設の計画においても「しんにゅう」という行為に対して進入なのかそれとも侵入なのかという漢字の使い分けという視点から考察すると取り組みやすいかもしれません。


 

トータルプランとしてのゾーニングや動線は衛生面からの計画を生産性とからめ、できるだけ衛生的であるべきではあるが、同時に生産的でありたいという企業の攻撃的な考え方も含んでいるのに対して、ディテールプランにおいては徹底した守りの考え方に徹することとなります。ただ5S実施における時間的効率向上には貢献するため積極的に実施するケースも十分考えられるのですが、先ずは野球で言うならば点数を入れるための攻撃側ではなく、点数をとられない守備固めを行うと考えてもらえればと思います。

 

バリア施設を考える

外部から入ってくるモノ(人・物・虫など)とその場所を洗い出します。その数や頻度・時間帯も同時に調べます。ただし虫などは、時間帯というよりもどの種類がどの程度数かを掴むことになります。
次に洗い出された進入・侵入者に対してはいかなる危害がもたらされるか分析し対策を考える。この危害分析は、実際にバリアとしてどの様な物、構造にするかという選択の場面で重要な決め手となります。

 

これらの事前調査を踏まえ実際の扉あるいはシャッターを選択していきますが、種類と組み合わせは衛生面のみならず、防犯・防火・耐久性なども考慮するとかなりの数となります。扉にしても、出入りが多い場所では向こうが見渡せる窓のほうがベターです。また窓を付けるなら結露対策でペアガラスとするのか、防火上で網入りガラスである必要があるのか、安全・衛生上でガラスではなくポリカボネードのように割れにくい物にするのか等を考えると材質(アルミ製・スチール製・ステンレス製等)との組み合わせでその選択数は膨大となります。

 

使用状況からもその選択は数多く考えられますし、トラックから原材料を受け取る倉庫の入り口をシャッターにするにしても、アルミ製の手動で開けられる軽量な物を取り付けようと考えても、防火上スチール製でなければならないケースもあります。またスイングドアは非常に使い勝手のよい建具ではありますし、台車を押して通行したい場合などはNo1候補といえます。しかし清浄度別にゾーニングされた施設内にて、同管理レベルのゾーニングの行き来には好都合でも、管理レベルの違うゾーンを行き来させるには、補足的な機能を付加しなければ動線計画との整合性が得られなくなり衛生面で落第となりますしエアバランスのよっては開放の状態ともなります。

 

バリア施設の計画をいかに行うとよいかという基本フローを解説しました。野球の守備固めにおける連携プレーの重要性と同様に、バリア施設も様々な施設固有のバックグラウンドを考慮し計画していかなければならないものです。HACCP対応の施設計画というと衛生第一になりがちですが、決して衛生面だけでは施設は構築できないものですし、使用していく過程で作業者同士の新たなる暗黙のルールが決められ数ヶ月経つと思わぬ不衛生な現場状況を目の当たりにすることになりかねません。バリア施設の計画に限らず、施設内に柔軟かつ厳格な衛生的ルールを構築させる施設を計画することが計画者・設計者にとって重要な役割でもあります。

 

 

 

 

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