見積価格差の落とし穴

見積価格差の落とし穴

食品工場や施設の建設において、複数の建設業者から見積もりを取得する相見積もりは一般的な手法です。しかし、価格の低さのみを重視して業者を選ぶことは、後に深刻な問題を引き起こすことがあります。

食品工場や施設の建設において、複数の建設業者から見積もりを取得する相見積もりは一般的な手法です。しかし、価格の低さのみを重視して業者を選ぶことは、後に深刻な問題を引き起こすことがあります。特に、設計事務所ではなく建設会社に工事施工を含めて概算的な見積書を取得する場合。換気計画や空調計画の不備による追加費用の発生は、よく見られる失敗の一例として知られています。

 

ある食品工場の建設プロジェクトにおいて、業者選定の際に見積価格の低さを重視した結果、換気や空調設備の設計が不十分でした。プロジェクト完成後、施設内の環境に問題が生じ、衛生基準を満たすために追加の工事が必要となりました。その結果、初期の見積もりを大幅に上回る数千万円の追加費用が発生し、工期の遅延も引き起こされました。このような事例は、見積もりに含まれる仕様や設計内容を十分に確認しなかったことが主な原因です。

 

この問題の根底には、価格競争によるコスト削減の圧力が存在しています。特に換気や空調設備は目に見えにくく、完成後でなければその効果を評価することが難しいため、設計段階で軽視される傾向があります。しかし、食品工場においては温湿度の管理や空気の流れが生産効率や衛生管理に直接影響を与えるため、これらの計画を軽視することは重大なリスクを伴うのです。

 

見積もりを比較する際には、総額だけでなく、仕様書や計画内容を詳細に確認することが不可欠です。特に換気計画や空調計画に関しては、設計段階から専門家の意見を仰ぎ、必要な機能や性能が確保されているかどうかを具体的に確認することが重要です。設計内容が不明瞭な場合には、詳細を記載した仕様書の提出を求めることが効果的です。

 

また、追加費用が発生するリスクを軽減するためには、契約時に工事の範囲や仕様を明確にすることが必要です。将来的に発生する可能性のある追加工事や調整費用についても、契約前に説明を受け、必要に応じて事前に見積もりを取得しておくことが望ましいです。

 

 

まとめ:見積価格差の落とし穴を避けるポイント
1.仕様書と設計内容の確認:換気計画や空調計画など、目に見えない部分の仕様を詳細に確認。
2.追加費用発生リスクの評価:低価格の見積もりが不十分な設計に基づいていないかを検証。
3.専門家のアドバイス活用:設備設計や計画段階で専門家の意見を取り入れる。
4.契約条件の明確化:契約前に仕様や工事範囲を明確に定め、追加費用の条件を把握。
5.複数業者の提案比較:価格だけでなく、設計内容や提案の具体性を比較検討。

 

これらの要点を理解することで、見積もり価格に関する問題を避け、安心してプロジェクトを進行させることが可能となります。

 

 

 

 

以下に、清潔区の空調設備に関する基本的な計画内容を示します。ただし、コストとのバランスを考慮する必要があり、衛生的な環境をいかにして経済的に実現するかは、設計者の技量が試されるポイントです。

清潔区の空調システム提案

 

清潔区の清浄度を保つための空調システムについて、具体的な提案を以下にまとめました。これらのシステムは、用途や基準に応じて柔軟にカスタマイズ可能です。

 

1. 高効率エアハンドリングユニット(AHU)
1. 機能
 1). 外気の取り込み、温湿度調整、フィルタリングを一括で実施。
 2). 多段階フィルター(粗塵フィルター、中性能フィルター、HEPAフィルター)を組み込み、清浄度を確保。
2. 特徴
 1). HEPAフィルターはISOクラス7~8に適合。
  2). 熱回収装置(ヒートリカバリーシステム)を搭載し、エネルギー効率を向上。
3. 推奨用途
 1). 製造ライン全体の空気清浄管理。

 

2. 圧力制御システム
1. 目的
  1). 清潔区を正圧に維持し、外部からの汚染物質侵入を防止。
2. 提案システム
 1). 圧力差をリアルタイムで監視するモニタリングセンサーを導入。
 2). エアダンパーや可変風量装置(VAV)を使用して、ゾーンごとに適切な圧力を自動調整。
3. 設置例
 1). 清潔区と準清潔区の間に圧力差を確保。
  2). 入口にエアロックを設置し、出入り時の圧力変動を最小化。

 

3. エアシャワー&エアロックシステム
1. 機能
  1). 作業者や物資の移動時に、清潔区に持ち込まれる微粒子を除去。
  2). 強力な送風(HEPAフィルター付き)で衣服や機材表面の塵埃を除去。
2. 提案システム
  1). 自動ドアと連動し、エアシャワー中にドアが開かない設計。
  2). 清潔区入口に適用。
3. 効果
  1). 出入りによる微粒子汚染を90%以上削減。

 

4. 温湿度調整システム
1. 目的
  1). 清潔区内の製品や工程に適した温湿度を維持。
2. 提案システム
  1). ダクト内に加湿器および除湿器を組み込み、湿度を40~60%に制御。
  2). 高効率空調設備(インバータ制御対応)を導入し、18~24℃の温度範囲を維持。
  3). 温湿度センサーを配置し、リアルタイムモニタリングを実施。
3. 推奨用途
  1). 製品の安定性を保つための充填エリアや包装エリア。

 

5. 局所排気システム
1. 目的
  1). 特定の作業や設備から発生する汚染物質を迅速に排除。
2. 提案システム
  1). 製造設備の近くに局所排気フードを設置。
  2). 排気された空気は、外気として処理される前にフィルターを通過。
3. 推奨用途
  1). 粉塵が発生する混合作業エリア。

 

6. 気流制御システム
1. 提案方法
  1). 製造エリアでは一方向(単一方向)流の気流を採用し、汚染物質が拡散しないように設計。
  2). 清潔度が比較的緩やかなエリアでは乱流方式を採用し、コストを抑制。
2. 追加設備
  1). 各エリアに配置した気流解析システムで、空気の流れを最適化。

 

7. モニタリングと自動化システム
1. 提案システム
  1). センサーを各ゾーンに設置し、微粒子数、温湿度、圧力差をリアルタイムで監視。
  2). 異常が発生した際に自動でアラートを発信し、空調システムが適切に調整を行う制御システム。
2. 特徴
  1). デジタルダッシュボードで運用状況を可視化。
  2). スマート制御により省エネルギー運用が可能。

 

8. 省エネルギー対策
1. 提案システム
  1). ヒートリカバリー装置で排気熱を再利用。
  2). インバータ制御で送風量を最適化。
  3). 自動的に清浄度を調整するスマートシステム。
2. 効果
  1). 清潔区の運用コストを最大20%削減。

 

創実ファシリティーズ株式会社では、これらの空調システムを統合し、清浄度維持とコスト効率を両立する設計・導入をトータルでサポートします。清潔区の空調についての詳細なご相談はお気軽にお問い合わせください。